私が犬のトレーニングの勉強を始めたのは、大学4年の頃です。
所属していた研究室でしつけ方教室を開催することになり、訓練士の方々にトレーニングの基本を教えていただきました。
協力してくださったのは、今も災害救助犬訓練士として大変活躍されている、
村瀬さん(村瀬ドッグトレーニングセンター)や大島さん(大島ドッグトレーニングスクール)なのですが、
一番初めに見せていただいたのは、
「犬と遊ぶこと」
でした。訓練士さん達が犬と遊ぶ姿は、素人だった私たちとは全く違い、圧巻でした。
まるでマジックを見ているように、あっという間に初めて接する犬たちを虜にしてしまい、
おもちゃやボールを巧みに動かし、犬が完全に”ロック・オン”してしまいます。
そして、どんどんと動きを教えていくのです。
これぞまさしく、プロフェッショナルの仕事、という感じで、見ていて鳥肌が立ったことを今でも覚えています。
そして、その技術を少しでも身に付けたい一心で、研究室で飼育していた犬達を相手に、毎日必死に犬と遊んでいました。
しつけやトレーニング=厳しくすることではない、ということは前回も書かせていただきました。
ダメ!ダメ!と言っていても犬は何も理解できません。
トレーニングを進めて行くためには、どんな動物でも
「強化子」
が必要になります。
強化子とは行動の頻度を増やすための刺激です。
多くの犬にとって一番効果があり、簡単に使える強化子は“食べ物=トリーツ”です。
一方で、おもちゃで遊ぶことも、タイミングよく使えば、とても強力な強化子になります。
訓練士さんは犬とおもちゃで遊ぶ技術が非常に長けています。
食べ物は満腹になると効果がなくなりますが、おもちゃはいつまでも効果が持続するというメリットがあります。
中には食べ物よりもおもちゃの方が強い強化子になる犬もいます。
シリウスではレッスンの中でよく、
「1日5分でもいいので、犬と向かい合って遊んでください」
と言います。
日々の生活の中で、人も犬もお互いに楽しいと思える時間を積み重ねていくことが
とても大切だと思っているからです。
また、何もすることがない退屈な時間が多い家庭犬にとって、飼い主と遊ぶ時間は、とても有意義な時間になると思います。
ただ、一方で、
「うちの子、遊ぶのあんまり好きじゃないんです。ボールを投げても取りに行かないんです。」
といったご意見もお聞きします。
ですよね・・・。犬と遊ぶ、いや、犬に遊んでもらうって、そんなに簡単ではないんです。
でも、毎日遊んでいたら、何かヒントがあると思います。
こんなおもちゃが好き、こんな手の動きをされるとついつい追いかけてしまう。などなど。
おもちゃで遊ぶのが難しかったら、トリーツをどこかに隠して探させるのも立派な遊びです。
遊びの中でオスワリやフセやマテなど、コマンドを入れていったら、それはトレーニングになります。
犬にとって遊びとトレーニングに境界はありません。
遊びもトレーニングも楽しくないと付き合ってくれません。
犬と遊ぶ、というと、
ちょっと時間ができたときに片手間に犬の相手をする、
というイメージがあるかもしれませんが、いやいや、非常に奥深い世界なんです。
ぜひ、目の前の犬といつまでも楽しく遊んでください。
辻村
[関連記事]