私が日本で所属しているドッグトレーナーの団体は、
JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)という団体で、
年に1回、3日間のカンファレンスを開催しています。
先週末は2年ぶりにそのカンファレンスに参加してきました。
やはりどの分野でも、時々セミナーなどに参加するって大切ですよね。
今回も色々な気付きがありました。
きっと参加した多くのドッグトレーナーが、「よし!がんばろう! 」
と思ったのではないでしょうか(笑)
少し専門的になってしまうかもしれませんが、 どんな内容のセミナーを受けてきたのか、
簡単にご紹介します。
ヴィベケ・S・リーセ先生
デンマークで動物行動クリニックを開業していて、ドッグトレーナー教育、 問題犬のコンサルタントなどを行なっています。すごくチャーミングな女性なのですが、やはり北欧の人って日本人にはない迫力がありますね。大型犬でもまったくビクともせずに扱えるだろうな~などと思いました(笑)。
ドッグトレーナー向けの日本語本を数冊出されていて、 ドッグトレーニングの分野では今注目の行動専門家です。
今回のセミナーでは犬のボディランゲージを細かく読み解くポイン トを、実際にデモ犬を使って、さらにその犬をビデオ撮影して、 繰り返し見直しながら話してもらいました。
元々大型肉食獣やオオカミについても勉強されてきた先生というこ ともあり、犬の行動を読み解く力が素晴らしかったです。
家庭犬トレーニングの現場ではつい、人間本位に動きがちです。
犬の行動が出ている理由を無視してトレーニングで人間が望む行動に強引に塗り替えて解決しようと してしまいがちになるのですが、やはり「急がば回れ」。
藤田りか子先生
ヴィベケ先生の書籍の翻訳もされている、動物ライター・ カメラマンで、スウェーデンの森で犬・猫・ 馬たちと生活されているそうです(うらやましい。。。)。
DogActuallyでライターをされているので、 ご存知の方も多いかもしれません。
藤田先生は今回のカンファレンスでは、 ヴィベケ先生の通訳をされると共に、 スウェーデンの犬事情についても講演をされていました。2つの講演のうち、1つしか聴けなかったので、内容が不十分かもしれませんが、
スウェーデンでは、国内で飼育されている犬のなんと8割もの犬が、スウェーデンケンネルクラブに所属しているそうです。そして、犬の飼育・管理・ブリーディング(繁殖)に関する多くの情報が、ケンネルクラブから会員に通達され、統制されているということでした。また、スウェーデンのブリーディングでは、外見と健康面だけでなく、気質・行動面に関するデータも重要視していて、それぞれの犬種に求められる気質・行動を持った血統を残していくために尽力されているそうです。これに関しては、ブリーディングの対象になる犬の多くがドッグ・メンタリティ・アセスメント、
というかなり手間のかかる行動テストを受けてデータを残しているそうで、1989年からスタートして、2万件以上のデータがあるとのことでした。これは相当な手間隙をかけなければ集められないものだと思います。
そんなスウェーデンでも、例えばコリーやゴールデンが、近年、本来の気質とかなり異なった個体が増えている、といったことが危惧されているなど、人気犬種にありがちな乱繁殖による問題が起きている、とのことでした。しかし、それについて客観的に把握できるデータがあり、それを修正していこうとする体制が取れる点が素晴らしいと思います。
日本でも、「この犬種って本来そんなに吠えないはずだよね?」とか、
「え?この犬種でここまで怖がりとは・・・」「最近流行ってるからかなぁ。。。」
などと、トレーナー同士で話し合う程度のことはよくあることですが、
それを数値で明らかにすることは不可能です。
ということは、良い方向に持っていくことも難しい、ということになります。
藤井先生が、
「ブリーディングとはある種の伝統工芸のようなもの」
と言われていたのが印象的でした。
ある犬種を残していく、ということは、長い歴史の中で作られてきた気質、外見を残しつつ、現代社会に合うように改善していく、高い理念と知識と経験が求められる行為だと思います。
日本で現在飼育されている犬種のほとんどは、欧米から輸入されてきた犬種ですが、
その犬種の役割をほとんど知らずに家庭犬として飼育している人も多いでしょう。
特にヨーロッパの国々では、現在はその多くが家庭犬として飼われているとしても、
長い歴史の中で、様々な分野でワーキングドッグとして作られ、使われてきたことを身近に感じられる場面が多々あると思うのですが、正直、日本人の私たちにはあまりピンと来ません。
ただ、やはり犬と生活する、ということは、それだけ長い歴史のある動物を家族に迎え入れ、
狭い家での生活を強いていることなのだということを、知って、時々思い出してもらえたらな、と思います。
最後に面白い動画を。藤田先生から、様々な犬種の本来の働きを色々紹介していただいたのですが、
その中で、ダルメシアンのキャリッジトライアル、という競技がありました。
(ダルメシアンは、元々馬車の伴走犬として働いていて、目立つようにあのようなブチの外観が選択されました)
こんな面白い競技もあるんですね。↓
辻村