社会化について

シリウス✩ブログはその時々で思いついたことを書いているのですが、
今回から、子犬を飼い始めた時に知ってもらいたい事を時々書こうと思います。
「うちの子、もう子犬じゃないよ~~」という方も、知識として頭の片隅に入れておいていただけると幸いです。

そして、今回のテーマは「社会化」です。

1.社会化トレーニング=スタートは早ければ早いほど良い

 

子犬と生活するって本当に大変です。
トイレや甘咬み、部屋中の物を噛む、この対処だけでも大変なのに、

さらに「社会化トレーニング」って・・・と思いますよね。

でも、犬を知れば知るほど、子犬の時期は本当に重要で、
特に社会化トレーニングは、めちゃくちゃ大事。
後からトレーニングで挽回しようと思ってもできないことがたくさんあります。

ドッグトレーナーとしては、

「子犬を飼ったら最低1年くらいは子犬中心の生活を送ってあげてください!!」

と言いたくなるのです。

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社会化トレーニングというのは、簡単に言えば、

 

「子犬のうちから色んな刺激に慣らせておいて、
人や物に怖がったり吠えたり攻撃的になったりしない、
自信のある落ち着いた犬に育てましょう。」

ということです。

 

「犬なんて元々人懐っこい動物でしょ?そんな子犬のころから必死でやらなくたって・・・」
と思われるかもしれません。
ではなぜ早く!子犬のうちに!と急かすのでしょう?

なぜなら、
12~14週齢頃に犬のメンタルはガラッと変化してしまう

からなのです。これは半世紀以上前の大規模な犬の科学的研究で明らかになっています。
14週齢までに人との接触がなかった子犬は、その後いくら慣らせようとしても、
人に対する恐怖心がなくなることはなかったのです(Freedmanら, 1962)。

また、Scott&Fullerによると、社会化期前期では恐怖心よりも好奇心が強く、
新しい刺激に積極的に興味を示すのに対し、8週齢頃から徐々に恐怖心が強くなり、
警戒し始めることも分かっています(下図)。

社会化グラフ

 

このことから、できるだけ
3か月齢までに、将来接するであろう、色んな刺激に慣らし、
良い関連付けを持たせて、できるだけ精神的にタフな犬に育てよう!

というのが社会化トレーニングなのです。

 

 

 2.人・犬・環境への社会化を意識する

 

社会化すべき刺激は、大きく分けると3つあります。

①    人間

・・・大人、子供、高齢者、男性、女性、帽子をかぶっている人、制服を着ている人、車椅子に乗っている人、杖をついている人、、、など

 

②    犬

・・・サイズ、犬種、性別、年齢の異なる犬

 

③    環境・音

・・・掃除機などの生活音、車、電車、自転車、ベビーカー、バイク、踏切、人混み、階段、エレベーター、滑りやすい床、商業施設、動物病院の診察室、、、など

 

この3種類の刺激を、犬が喜ぶオヤツと関連付けたり、楽しい経験をさせたりして、しっかりと慣らせていくことが大切なのです
(詳しくは「ダンバー博士の子イヌを飼ったあとに」

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3.社会化トレーニングの理想と現実

 

しかし、社会化トレーニングには理想と現実があります。

 

本来、家庭犬になる犬は、家庭的な環境下で繁殖・出産され、
母犬・兄弟犬そして人ともしっかりと関わりを持たしてくれたところから
自然に離乳したタイミング(
8週齢前後)で新しい飼い主の元に行くのが理想です。

 

ただ、現実には多くの子犬は繁殖業者からペットショップを介して飼い主さんの元に来ます。手元に来るまでにどのような環境で生まれたのかを知っている飼い主さんはほとんどいません。
実際はよほど意識して手間暇をかけているブリーダーやペットショップでない限り、母犬・兄弟犬との関わりや人や環境刺激への社会化は不十分でしょう。

 

次に問題になるのがワクチン・プログラムです。
子犬はパルボウィルスやジステンパーといった深刻な感染症の免疫が不十分ですから、適切なワクチン・プログラムを受ける必要があります。免疫が不十分な時は、無防備に屋外の地面を歩かせたり、感染の危険がある成犬と遊ばせたりすることは控えたほうが良いのですが、この時期が、
ちょうど社会化トレーニングに最適な3ヶ月齢の頃と重なるのです。

 

したがって、飼い主さんの手元に来た時にすでに社会化が不十分な状態で、
免疫不十分のためにさらに社会化を足止めされてしまう、というのが現実なのです。

 

つまり、ワクチン・プログラムが完全に終了するまで、
家から一歩も出さず、5ヶ月齢を過ぎたくらいに、
「さ、お散歩デビューしようか!」では、あまりにも遅すぎて、
色々な刺激に過度にストレスを感じる犬に育ってしまう可能性が高くなるのです。

 

なので、

できることならできるだけ理想に近い環境で育った子犬を探し、
子犬が手元に来たらできるだけ早く、
清潔・安全な環境で人や環境への社会化トレーニングをスタートし、
獣医師の許可が出たら
パピークラスに参加して犬との社会化をスタートさせてください。
ワクチン・プログラムが終わっていない段階でも、
家に知り合いを呼んで、子犬と触れ合ってもらったり、

抱っこして外に連れ出して、様々な環境刺激に慣れせてください。

 

 

4.社会化は継続するもの

 

 

そして、もう1つ覚えておいてもらいたいことは、
社会化トレーニングは、子犬の頃だけにおこなうものではない
ということです。
パピークラスの頃はどんな人や犬ともフレンドリーに関わっていたのに、久しぶりに会ったらとってもビビリん坊になっていた、なんてワンちゃんがたまにいます。
社会化トレーニングは、「子犬の時に」ではなく、
「子犬の時から成犬になるまで」続けることで、
フレンドリーで自信のある成犬に成長してくれるのです。

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辻村

 

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