子犬向けのレッスンをしていると、ほぼすべての飼い主様からこのようなご質問を受けます。質問というか、悲痛な叫びです。でも、安心してください、甘噛みの嵐は成長と共に必ず過ぎ去ります。噛む子犬がそのまま咬んで人を傷付ける成犬になるわけではないのです。
【目次】
- 甘噛みはとても重要な行動
- 厳しい罰は非常に危険な行為
- 対処方法①「オモチャを持ってしっかり遊ぶ」
対処方法②「噛める物をしっかり与える」
対処方法③コマンド「オフ」を教える - まとめ
1.甘噛みはとても重要な行動
犬にとって口を使うのは、人が手を使うのと同じようにとても重要な機能です。獲物を仕留める、物を運ぶ、食べる、仲間と遊ぶ、敵と戦う、など様々な場面で口を使います。
そこで、子犬のうちから噛む行動を自分でコントロールできるように練習を始める、
これが「甘噛み」なのです。
子犬はたくさんの遊びを通して咬む加減を学びます。子犬のうちに犬や人としっかりと噛みつき遊びを繰り返した犬は、通常成犬になったときに強く咬んで傷付けることはありません。逆に子犬の頃に他の犬と遊んだ経験がほとんどなく、大人しくて飼い主さんのこともほとんど咬んだことがない犬は、一見安全なように見えますが、実は自分の咬む力を知らないため、将来突発的な事故が起きたときに大ケガを負わせる危険性があります(例えば、遊びに来ていた親戚の子供にたまたま尻尾を踏まれたなど)。
これらの危険を予防するために、子犬のうちにパピークラスやいぬのようちえんなどで遊ばせる機会を作り、咬む加減を学ばせることはとても重要なのです。
2. 厳しい罰は非常に危険な行為
甘噛みの対処方法を調べると、色々な方法が出てきます。
・遊びを中断する
・無視をする
といった方法を目にすることが多いですが、中には、
・口を強く押さえつけて目を見て“ダメ!!”と言う
・げんこつを口に突っ込む
など体罰を与える方法を見かけることがあります。遊びの中断や無視などの方法ではなかなか噛むことが直らないため、ついつい、厳しい方法に走ってしまう人もいるようですが、
体罰を使うと、副作用が起きてしまうので、絶対にやめてください。
甘噛みに体罰を使うことによる副作用①「自分の咬む力を知らないまま成長してしまう」
厳しい体罰は確かに行動を止めます。つまり、体罰を使うと甘噛みが収まります。
ただし、1.に書いたような重要な甘噛みの遊びを止めてしまうので、自分の咬む力をコントロールできないまま成長してしまうのです。したがって、成犬になったときに自分の身に何かが起きたとき、相手をひどく傷つけるような咬み方をする危険性があります。
甘噛みに体罰を使うことによる副作用②「人を怖がる・人の手を怖がる犬になる」
体罰が効果的に作用するということは、甘噛みをしたときに、子犬にとって怖い!と思わせるようなことをするということです。つまり、遊ぼう!と甘噛みしてきた子犬に対してそこまで怖いことをすると、その人(人の手)のことが怖い、さらに、すべての人間(手)が怖いと学習させてしまう危険性があります。
日本にいるほとんどの子犬は5kg未満です。中には1kgに満たない子犬もいます。そんな子犬たちが、「遊ぼう♪遊ぼう♪」と噛んできていることに対して、体重が何十倍もある人間が口を強く押さえつける行為は、我々が巨人に押さえつけられるようなものです。明らかにやりすぎであり、虐待行為と呼べると思います。