3. 対処方法
①オモチャを持ってしっかり遊ぶ
子犬は噛む生き物であり、エネルギーの塊です。飼い主さんが近くにいたら絶対に遊びたくて噛みにやってきます。そのときに気を付けることは、
“素手で遊ばないこと”
目の前に「手」しかないと、子犬は必然的に手を噛んできます。必ず子犬と関わるときはオモチャを持って遊んでください。小さいオモチャよりも、ロープなどの長めのオモチャの方が遊びやすいです。
オモチャを持っているにも関わらず、手を噛んでくるようであれば、「イタい!!」と言ってすぐに遊びを中断(タイムアウト)します。タイムアウトの時間は10~20秒くらいです。
手を噛む➡楽しかった遊びが止まる、もしくは、人が部屋から出ていく
このルールを徹底することがとても重要です。
「イタい~~!」と言いながら逃げ回って服や足を噛まれているのでは、子犬は楽しい遊びが続いているとしか思えません。手を噛むと騒いでくれて余計に楽しいからもっと手を噛もう!と思うかもしれません。
したがって、10歳以下の子どもがこの方法を自分で徹底するのは難しいでしょう。子どもが子犬と遊ぶときは必ず大人がそばにいて正しいタイミングで対応できるように手助けしてあげてください。そのためには、まず大人が子犬と上手に遊べるようになる必要があります。子ども任せにならないように気を付けてください。
そして、理解しておく必要があるのは、上記のようなタイムアウトを行っても、甘噛みはすぐには収まらない、ということです。繰り返しタイムアウトを使いながら遊ぶことで、子犬は少しずつ人との遊び方を学習していきます。
②噛める物をしっかり与える
犬の歯は4~6ヵ月頃に歯が生え変わります。28本ある乳歯が2ヵ月程度で抜けて、42本の永久歯が生えてきます。人に比べてずっと短時間でたくさんの歯が抜け落ちるため、この時期、口が気持ち悪くて何かを噛みたがる子犬はとても多いです。噛むことを叱るのではなく、噛んでも良い物をしっかり与えてあげましょう。
噛むオモチャについては、まずコングを使うのがお勧めです。
他には、デンタルチュー、マロ―ボーン、ハーツ®デンタルボーン、フェッチなども良いでしょう。
硬すぎると歯を痛めてしまいますので、気を付けて与えてください。
③コマンド「オフ」を教える
英語圏では「Leave it」とも言われるコマンドですが、口を離して、そこから離れて、ということを犬に教えるコマンドです。これを教えることができると、しつこく噛んでくるときに一旦、口を離すことができるのでとても便利です。ただし、「オフ」ばかり使ってしまうと、子犬の噛んで遊びたい欲求は満たされません。オモチャなどでしっかり遊んで満たしてあげることも忘れないでください。
6. まとめ
以上のように、子犬の甘噛みという行動は、子犬の成長過程で避けて通れない行動であり、しっかりと経験させる必要があります。特に子犬を1頭で飼育している場合、噛んで遊びたい欲求がすべて飼い主さんに向かってくるため、相手をするのは大変ですが、体罰は使わないで、根気よく付き合ってあげてください。
そうすれば、4~5ヵ月頃をピークに徐々に噛む強さがましになってきて、7~8か月ごろには歯は当たるが強くは噛まない程度になり、1歳くらいになった頃には懐かしい思い出になっているでしょう。
1歳を過ぎてもしつこく甘噛みが続くようであれば、甘噛みを強化するような遊び方や関わりをしている可能性があります。ドッグトレーナーにご相談ください。
なお個体差がありますが、5ヵ月前後から、物や食べ物を守って怒る、体を触られることに対して過敏に反応して怒る、咬もうとする、といった行動を示す犬がいます。これは甘噛みではありません。対処方法が異なり、悪化すると人を咬んでケガをさせてしまう危険性がありますので、早めに応用行動分析学を理解した専門家にご相談されることをお勧めします。
(追記)
今から3か月ほど前に、甘噛みで本当に困っている、と3ヵ月齢のパピーの飼い主様からご相談を受けました。
「心配しなくて大丈夫ですから、根気よく付き合ってください、3ヵ月くらいすると落ち着いてくるはずです」とお話すると、「確かに最近落ち着いてきました!」とご連絡をいただきました。
甘噛みは子犬が必ず通る道です。楽しみながら付き合ってあげられるといいのですね♪