食べ物を使ってトレーニングをする(1)

シリウスでは、トレーニングの時に食べ物を使ってトレーニングをします。ドッグフードを喜んで食べる子はドッグフードで、オヤツの方が集中する子はオヤツも使います。

食べ物を使ったトレーニングについては、以前新聞に掲載していたコラムでも書いていますので、よろしければこちらもご覧ください。「食べ物の力~信頼構築の手助けに~

今日は食べ物を使ったトレーニングについて、なるべく分かりやすく解説したいと思います。

食べ物をトレーニングに使う目的は、大きく分けて2つの効果を期待しています。

  1. 食べ物が与えられる状況、環境に慣れる、良い印象を持つ。
  2. 犬がある行動をした直後に食べ物が与えられることによって、その行動をする頻度が増える。

たとえば、パピークラスでは、自分の犬、他の犬に関わらず、近づいて1粒フードを与える、体を触ってフードを与える、ということを何度もしてもらいます。これは、 人が近づいたり触られたりすることに慣れ、人のことが好きになることを促すために行います。

それ以外に、簡単なコマンドトレーニングをして遊ぶこともあります。その場合は、オスワリができたらフードを1粒与えることを繰り返します。これは、主に2の効果を期待しています。「オスワリ」の合図で座ったらフードをもらえることを犬が学習したら、オスワリをする頻度が増えます。

どちらもパピークラスを例にして説明しましたが、これは成犬でも当てはまります。人に対してかなり恐怖心を抱いている場合、成犬でも1を頻繁に使います。手から食べ物を食べることが難しい場合は、犬の近くに食べ物を投げ落とし、「この人間から食べ物が出て来るから、危険な人ではないんだ」という感情を犬が持つまで待ちます。あるいは、例えば狭い道が苦手、だとか、車の中が苦手、といった、何か苦手な状況がある場合には、その状況で食べ物を食べることを繰り返すことで、その状況に慣れていくように促します。

2で学習することは、オスワリだけでなく、フセ、マテ、オフ、オイデ、マット、ツイテ、オテ、オカワリ、タッテ、スピン、ゴロン、・・・というように、基本的なコマンドから動きを楽しむトリックまで教えようと思ったら50~100個以上のコマンドを教えることも不可能ではありません。(200以上のコマンドを覚えた犬もいます)

ただし、この2つのトレーニングが成立するためには、

『その食べ物を食べることが、犬にとって喜ばしいことになっていること』

という前提があります。

中には、あまり食べ物に興味がない犬や、同じ物をあげているとすぐに飽きてしまう犬もいます。明らかに犬にとって喜ばしい物になっていないのに、トレーニングに熱中するあまり、無理やり食べ物を与えようとすることがありますが、これでは逆効果です。トレーニングする人は、食べ物が効果的に作用しているかどうか冷静に判断しながら進めていく必要があります。

当スクールでは、すべての参加犬に、レッスン時は空腹の状態にさせておいてください、とお願いしていますが、さらに効果的な方法として、

「家で、お皿から一切フードを与えないでください、フードはすべてトレーニングしながら、手から与えてください」

とアドバイスします。特に子犬の時期は覚えてもらいたいことがたくさんありますので、お皿から何十粒も一気にフードを与えることは、お金をドブに捨てるくらいもったいないことです(苦笑)。

それでもすぐにフードに飽きてしまう犬は、トレーニング時間を極力短くし、できれば飽きる前に切り上げ、短時間のトレーニングを何回も行った方が効果的です。

今まで見てきた犬たちは、初めはフードに見向きもしない犬でも、気を付けてフードを与えることで、少しずつトレーニングで効果的にフードが使えるようになっています。

オモチャや褒め言葉、ボディタッチなどが犬にとって喜ばしいことになり、トレーニングに使えることもありますが、それらを効果的に使うのは、食べ物を使う以上に難しいものです。食べ物を喜んで食べてくれさえすれば、食べ物を使ってトレーニングすることはとても簡単なので、少しやってみて上手くいかなかったからといって、すぐに諦めてしまわず、上記のような方法を試しながら、いつでも喜んで手から食べてくれるように癖づけてもらいたいと思います。

次回は食べ物を使ったトレーニングで陥りがちな失敗について書きたいと思います。

(辻村)

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(写真)少し怖がりなゴールデン・パピーの碧くん。慣れない足裏の感触に不安を感じているのが顔の表情や姿勢から伝わってきます。食べ物を使いながら自信を付けていくトレーニングをしています。

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